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子育て相談Q&A

子育てに関するよくあるご相談をQ&A形式でまとめています。
Q&Aで知る新しい保育
  • Q1 壁のような仕切りがなくて、子どもは隣でやっていることが気になりませんか?
    私たちの園では、クラスごとの壁というものがありません。 一つの子どもの集団が楽器を鳴らしている横で、本を読んでいる集団がいます。そこで、こんな質問をよくされます。
  • A 子どもは集中すれば、周りのことが気になりません。
    子どもにとっての壁、つまり隣と遮断するものは、集中力です。取り組んでいることに集中していると、子どもは周りのことは気になりません。 逆に集中していないと、たとえ実際に壁があっても、壁の向こうで何が起きているか、外では何が起きているのか気になって落ち着きません。 したがって保育者は、その場にいさせるためには、壁に囲まれた隔離された部屋に無理矢理閉じこめるのでなく、活動に集中するような工夫をするべきなのです。 今、小学校では、入学までにつけてほしいものとして、「文字」「数」の力よりも「集中力」だと言います。今の子は、その集中力がないと言われます。 しかし、レポートの中でも書いたとおり、子どもから集中力を奪っているのは、大人たちなのです。子どもが物事に集中していて、声をかけても気がつかないとき、わざわざ大声で「何度言ったら聞こえるの!」などと言っていませんか? ハードとしての「壁」など頼りにせずに、子どもの心の中に「集中力」という壁ができるような取り組みを工夫したいものです。
  • Q2 仕切りがなくて、子どもが出ていったりしませんか?
    子どもたちがふらふらと出ていってしまうのは、保育者の悩みのーつでしょう。ましてや、壁という仕切りがなかったら、どうなるのでしょう。これもよく聞かれる質問です。
  • A 子どもたちが出ていってしまう原因を考えてみましょう。
    子どもたちが部屋から出ていってしまうのはなぜでしょうか。それは、いくつか理由があると思います。 一つは、今やっていることがつまらないからです。逆を言えば、外の方がおもしろいか、おもしろそうだからです。実際は、おもしろいことなどあまりありません。 特に廊下などには、誰もいず、何もやっていないことが多いからです。しかし、おもしろそうだという気持ちは、あって当然です。 それは、子どもの大切な特性のーつである「好奇心が旺盛」だからです。そんなときは、かえって外の世界が見えてしまった方が落ち着きます。 しかし、もし本当に外の方が子どもにとっておもしろいことがあるのであれば、他の保育者とも協力して、それも保障してあげてしまった方がいいでしょう。 その保障が、我慢のできる子をつくることにもなります。 保育室から出てしまうもうーつの理由に、みんなに注目されたい、特別に保育者にかまってもらいたいというのがあります。 この気持ちには、早いうちにケアが必要な子どもの訴えが含まれていることが多々あります。このようなケースで、壁のような仕切りの中に閉じこめておいたり、強制的にじっとさせていたのでは、子どもの気持ちに気がつくのが遅くなってしまいます。
  • Q3 各部屋が並んでいるといった造りで、コーナー保育はできますか?
    たいていの園は、学校の教室のように片側に廊下があり、そこに保育室が並んでいて、年齢別のクラスで分けて使っていると思います。それでもコーナー保育はできるのでしょうか。
  • A 活動内容で部屋を分けて使えば大丈夫です。
    コーナー保育の考え方として、まず、子どもが自らやりたいことを選び、それを満足いくまで活動できる環境を用意することが大切です。 そこで、日によって、またある時間内でもかまいませんが、3、4、5歳児の部屋といった分け方を、図書の部屋、造形の部屋、ままごとの部屋、 ブロックの部屋というように活動内容で分けてみます。 朝、登園したら、好きなコーナーに行って、好きなことをして遊ぶといった日があっても楽しいではありませんか。 また、それぞれ活動するときに、その活動を最後までできたり、集中している子をじゃましないようなコーナーを、部屋の隅など小さくてかまわないので作っておきます。 ちょっとした仕切りで、隅を図書コーナーにしたり、ままごとコーナーにしておくのです。 また、同じーつの部屋で遊んで食べて寝るというクラスの枠を取り払って、この部屋でみんなで食べて、あっちの部屋でみんなで寝るというようにすると、子どもをせかすことをせず、満足いくまで活動させられるので、保育者も次の活動の準備をスムーズにできるようになります。
  • Q4 実際にどんなコーナーを作っているのですか?
    私たちの園では、3〜5歳児クラスでコーナー保育を取り入れています。 どんなところに気をつけてコーナーを作っているかを紹介します。
  • A コーナーでは、自分の好きな、自分のやりたいことを、自分で選んで過ごします。
    園は大きな家庭と言いながら、家庭にはない大きなホールのあるところが多いのですが、私たちの園にはホールがない代わりに、 ダイニングルーム(食べるコーナー)と、寝室(寝るコーナー)があります。そして、遊ぶコーナーは、大人の目の高さから見ると、誰が、どこで、何をしているか、 全体が見渡せる高さの家具で仕切られています。その高さは、子どもにとってはそのコーナーがーつの部屋になるような、視界が遮断されるようなものになっています。 このコーナーでは、自由遊びの時間帯に、自分の好きな、自分のやりたいことを、自分で選んで過ごします。 また、課題が早く終わったとき、給食を早く食べ終わったとき、まだ眠くならないとき、早く午睡から起きたときなど、すきまの時間の保育として、誰にも指図されずに 過ごせる場所にもなります。 そんな場所を用意しておくだけで、よく見られる「終わったらどうしたらいいの?「ねえ、次、何をすればいいの?」という言葉は聞かれなくなります。 コーナーの種類としては、子どもに人気のあるままごとコーナーや図書コーナー、制作コーナー、フロックコーナー、手遊びコーナーを常設し、 お楽しみ会の後などは変身コーナーなどを期間限定で作っています。
  • Q5 廊下はないのですか?あった方が歩くときの方向性が出ていいのでは?
    私たちの園ではいわゆる廊下がありません。階段をあがるとすぐに大きな部屋になっています。それで、よくこんな質問をされます。
  • A 「はみ出た子」をつくらないために・・・
    私の子どもの頃の学校の廊下といえば、「廊下に立たされる」「廊下に出される」ということや、毎週の目標としていつも「廊下を走らない」があったことが思い出されます。 また、最近は学級崩壊を表す言い方として「廊下に出てしまう」というものがあります。どれもなんだかイメージがよくありません。 それらは、廊下が「活動をしている部屋の外」という空間であるため、その空間に出すことで活動に参加させないという意味であったり、その空間に行った子を「はみ出た子」という意味に使われてしまうのです。 園の中に、そのような空間を作るべきではありません。そこで、廊下を一つのコーナーにして、廊下に出た子を「出てしまった子」でなく「違うコーナーに行った子」というように考えます。 避難路の確保としては必要ですが、例えば図書コーナーやままごとコーナーにしたりと工夫ができます。 まず、園の中のどこにも、子どもの居場所を確保してあげるのです。もちろん、保育者の意識の中でも「はみ出た子」をつくってはいけません。 どこにいようが、何をしていようが、保育者の中では、保育している子でなくてはなりません。
  • Q6 このような考え方で保育をするにあたり何から始めたらいいのでしょう?
    今の子どもたちには、どんな力が求められているのでしょうか。その力をつけるために、保育のどこから見直していけばいのかを考えてみましょう。
  • A まず子どもたちが白分の考えをはっきり言える機会をつくりましょう。
    今の子どもは、自分の考えをはっきり主張することが苦手です。少子化のせいもあって、保護者は子どもが思っていることや望むことを、子どもが言う前に先回りして与えてしまいがちです。 園でも子どもを世話するという言い方で、次から次へとメニューを提供して子どもを動かしてしまい、子どもが自分から主張する機会を少なくしていることがあります。 まず、自分の口からはっきり自分の考えを言える機会をつくりましょう。それが、私たちの試みている保育のめざすところなのです。 例えば、給食の場面を見直してみましょう。本人の意思に関係なく「食」を「給う」ことをしていないでしょうか。 「給う」とは、「上のものから下のものへ物品を与える」ということです。よく、保育園などの思い出でいやだったことに「給食」をあげる子どもが多くいます。 人生の楽しみのーつである「食」がいやな思い出になるのは、食べさせられているからです。 自分から食べているという意識になるよう工夫をしてみましょう。ただよそったものを配るのではなく、自分で量を注文してよそってもらうとか、何(箸とかスプーン)を使って食べるかを自分で決めるとか、一緒に食べる友だちを自分で選べるとか、園の中で、子どもが自分の考えをはっきり言える機会をどれくらいつくれるか、まず考えてみることです。
  • Q7 年齢別の一斉保育はどの程度残せばいいのですか?
    異年齢児保育を取り入れているからといって、私たちも全く年齢別の一斉保育をしていないというわけではありません。時と場合に応じて臨機応変に対応しているのです。では、どんなときに年齢別の一斉保育をしているのでしようか。
  • A 発達過程に関係のある活動時は、年齢別の一斉保育をしています。
    基本的に人の発達は、年齢が増すにつれて進んでいきます。特に乳幼児ほど、年齢的に近いとほぼ同じ発達の特徴が現れます。それで同じ年齢の子どもに同じことをさせようとするのです。物事を伝達するのには、効果的だからです。 そこで私たちは、設定保育といわれる計画された保育の中で、何かを伝達しようとするとき、また、一斉に発達過程に関係のあることをしようとするときは、年齢別の一斉保育をすることになります。例えば、保育絵本を使って指導するときなどです。保育者が子どもたちの前で絵本を使うときに、個人個人の発達過程に合わせて使うわけにはいきません。 そんなときには、一応年齢別にします(しかしそんなときでも、他のクラスがおもしろそうであれば、そのクラスへの移動は認めてあげましょう)。 保育のデイリーを、小学生の生活と照らして考えてみると、異年齢の活動と、年齢別活動がわかりやすくなります。一日の中で同年齢で過ごすのは、学校での授業中だけです。その他の時間帯、朝学校に行くまで、学校での自由時間(休み時間)、放課後、家での食事、自由に遊ぶとき、寝るときは地域の友だちや家族といった異年齢集団で行います。園生活でも、少なくともそんな生活を送るべきでしょう。
  • Q8 好きな活動を選ばせていたら、いつも同じ活動ばかりをしてしまいませんか?
    前に子どもの集中力はすごいと書きました。確かに、子どもは好きなことを飽きずに何度も繰り返して遊ぶ傾向があります。そこで、子どもの活動が偏ってしまうのではという不安が多くの保育者にはあるようです。
  • A 同じ活動に見えても、子どもたちは少しずつ世界を広げているのです。
    まず、自由な時間の中では同じ活動でもかまわないと思います。というのは、その活動は子どもにとっては偏った活動ではなく、とても好きな活動であったり、熱中できる活動だからです。そして、大人には同じ活動に見えても、少しずつ工夫をしたり、違う角度から取り組んだりしているはずです。もし、それが見つからないでいる子には、そっと助言してその世界を広げてあげましょう。 その広がりが、他の活動に移るきっかけになります、また、子どもたちにある課題を与え、活動を選択させた場合に、いつも同じものを選ぶのは、それがその子にとってはもっともその課題に取り組むのにいい方法だと思えるからであり、その子の個性にもなるのです。 しかし、子どもにとっては、好きな活動を自由に満足のいくまで取り組んでいるという場合でも、保育者はそれをきちんと把握しておく必要があります。勝手にさせているのではなく、自由を保障しているのです。その子が自由にその取り組みができるように、いつでも援助する用意が必要なのです。そのために、どの子がどんな活動を誰としているかを、その場にメモを置いておき、気がついたときに保育者が記入しておくようにしましょう。
  • Q9 どこまで子ども自身の自由な選択に任せてよいのですか?
    自由と放任は、似ているようで全く違います。子どもの自由を保障するとはどういうことなのでしょうか。正しく認識できている保育者はどのくらいいるのでしょうか。
  • A 自由は、年齢によって与えられる範囲が変わります。
    自由を手に入れるにはいくつかの条件があります。一つは、自由に対しての責任がとれるかということです。もうーつは、自由に物事をやれるだけの力が備わっているかです。それを、保育者が各年齢ごと、各個人ごとに見極めなければなりません。そうしないと、単に勝手にやることになったり、放任になったりしてしまいます。 ひなどりに「空を自由に飛びなさい」と言って高い所から飛び出させても、飛べる力がないうちにやれば、落ちて大けがをしてしまうようなものです。保育の中で、自由にコーナーが使えるようになっていても、後片づけができないと、次に使う人の自由を奪うことになるのです。例えばお昼寝をしたくないとき、お昼寝をしたい人の自由を奪わないで過ごせる年齢になれば、寝ない自由を与えてもかまいません。 しかし、2歳児に「寝るか寝ないかを選びなさい」と言っても無理でしょう。でも、「好きなところで寝ていいよ」と言うと喜んで寝る場所を選ぶかもしれません。でもそれも乳幼児には無理です。自由は、年齢によって与えられる範囲が広がっていくものなのです。
  • Q10 異年齢集団をどのように考えたらよいのでしょうか?
    異年齢児保育というと、年長児に年少児の世話をさせるといった誤解をされます。そういう場合もありますが、必ずしもそうなることが目的ではありません。では、異年齢という集団を扱うときどのように考えたらよいのでしょうか。
  • A 年齢は一つの発達過程の目安です。年齢による上下関係だけにこだわらず…。
    人は、生まれてから年齢が増すにつれて発達をしていきます。特に、乳幼児期の心身の発育・発達は著しいものがあります。しかし、この子どもの発達は年齢によるものだけでなく、子どもを取り巻く環境内の人や自然、出来事などとの相互作用の結果として進んでいきます。また、その子の生理的、身体的な諸条件や養育環境の違いによって、その発達の進み方や現れ方が異なってきます。 したがって、必ずしもどの年齢なら何ができるということが成り立たなくなります。保育指針の中でも、年齢は一つの発達過程の目安として示されています。よく異年齢で構成されたクラスで、年長児の思いやりを育てるという言い方で、下のクラスの子の面倒をみさせたりしますが、異年齢集団の中でも必ずしも年齢による上下関係だけでなく、できる子、得意な子が、できない子、苦手な子をみればいいのです。 もし、面倒をみる、みられるという経験や、先生の手伝いを経験させたいときには、できること、できないことが逆転しない年齢差の中で、例えば年長児が2歳児以下のクラスに入るなどすれば、はっきりと世話をするということが体験できるでしょう。
  • Q11 障害児などはどのようにみるのですか?
    最近、障害児といわないまでも、気になる子が多くなりました。補助員がつかず、他の子と一緒に保育する場合、そのような子どもたちにどのような援助をしていけばいいのでしょう。
  • A 自ら選んで活動できる環境の中で、一つの個性を持った子として認識しましょう。
    障害児といっても、子どもによって障害の程度が違うので一概には言えませんが、基本的な考え方として、その子が他の子よりも遅れているのではなく、ある部分他の子と違うところがあるという捉え方をします。 そして、その違いに対して、特別なカリキュラムを用意します。それは、必ずしも違うクラスにすることではありません。だからといって、同じことをさせることでもありません。障害児としての問題が起きるのは、一斉にどの子にも同じことを同じ方法で一方的に指導する場合です。このような保育は、障害という差ほど大きくなくても、個人差という差を持つ一人ひとりの子どもにとっても問題があります。 そこで、一人ひとりが生き生きとした自発的な能動的な活動を、その子に合った方法で援助されることは、障害児だけでなく、どの子にとっても望ましいことなのです。そのためにまず、それができる環境を用意する必要があります。一人ひとりが自ら考え、自ら選び、自ら興味を持つ活動ができる場が用意されていると、障害児も特別な存在でなく、一つの個性を持った子として認識されるようになります。ただ、他の子より、援助がより必要なだけです。それは、活動する場を変えることではなく、活動する場への関わり方を援助するということなのです。
  • Q12 給食やお弁当をいつまでも食べさせていて、小学校へ行って困りませんか?
    自由に食べたいものを食べたい量だけ、自分の満足のいくまで自分のペースで食べることは「食」を楽しむ上ではとても重要なことです。しかし、学校など集団行動が優先されている場所では、それは許されないことかもしれません。さて、どう考えたらいいのでしよう。
  • A 食べるのをせかしたり中断しては、本当の意味での解決にはなりません。
    小学校では、食べる時間が決まっています。そのために、園でも時間内で食べられるようにと、食べ終わる時間を決めているところが多く見られます。時間を決めることはいいのですが、どのようにして、時間内で食べるようにしているのでしょうか。ほとんどは時間が来たら終了させる場合が多いようです。途中で中断をさせるのです。または、声をかけてせかしています。 しかし、どちらにしても、食べるのが遅い子の遅い原因を解消していないために、本当の意味で解決(時間内で食べること)になりません。食べるコーナーを作って、食べ終わるまで時間を保障するということは、いつまでも食べているのを放っておくという話ではありません。 そのコーナーに保育者がついて、一人ひとりの遅い理由をきちんと把握して、その原因を解消する援助をするためなのです。ただしそのときに、子どもだけにして、居残りで食べさせられているような気持ちにさせないように配慮しなければなりません。
  • Q13 箸を使う指導は、どんなときに、どのようにすればよいのですか?
    前半でも述べたとおり、私たちの園では、子どもたちに何を使って食べるのか選択してもらっています。箸を使ったりスプーンを使ったりする子がいる中で、箸の使い方の指導はどうしたらよいのでしょう。
  • A 遊びながら自然に身につけられるような工夫をしましょう。
    箸を使うことは、食べるための手段というだけではなく、鉛筆の持ち方や手先の訓練のためにも必要なことです。そのために、きちんとした指導をするべきです。食べるという楽しい営みの中で、注意をしたり指導するべきではありません。 食べることが楽しいと感じるためには、上手につかめないとか、上手にロに持っていけないということに気をとられないように、自分が使いやすい道具を選んでもらってかまわないのです。では、箸の指導はどこでしていくかというと、保育の中で、遊びの中でしていけばよいのです。 そうすることで、その指導を様々な工夫によって段階的にしていけるのです。例えば、つかむものも初めはつかみやすい素材(スポンジなど)、つかみやすい形(あまり大きくなく真ん中にへこみのある形)から練習していきます。難易度の違うものを別々の容器に入れて置いておきます。 箸の持ち方は、最初は保育者がそばについて持ちやすい持ち方を教えてあげます。その後はおもちゃのお皿から絵に描いたくまさんのロに移す遊び道具として、箸を遊びコーナーに置いておくようにします。その他に、直接的な箸指導だけでなく、様々な遊びの中に取り入れる工夫をしてみましょう。
  • Q14 嫌いなものを取り除いてしまっては好き嫌いが直らないのではないですか?
    給食の際、子どもたちの注文に合わせて、嫌いなものは除いてあげています。好き嫌いをなくすことや栄養価を満たすことに重きを置いている保育者にとっては、心配になるのかもしれません。
  • A まず食べることを“苦痛“でなく、“楽しみ“にすることが必要です。
    子どもの食べ物の好き嫌いをなくそうと、保育者が一生懸命に食べさせようとする気持ちはわかります。しかし、その気持ちが強いほど、好き嫌いのある子は給食時間が近づくにつれ、憂欝になっていくでしょう。 そして、嫌いなものが皿にのっているのを見た途端、のどがぎゅっと縮まってしまいます。すると、食べる前からゲーゲーしてしまいます。そんな状態ではいくら励まして食べさせようとしても、またいくらロに入れても、その食べ物が好きになるわけではありません。そして、小学校時代とともに園のいやな思い出のベストワンに給食があげられてしまうのです。まず、給食時間を待ち遠しい時間にしなくてはなりません。それには、好きなものを好きなだけ食べられるという期待が持てるようにしなくてはいけません。 そのために、自分で量を注文し、自分から嫌いなものを指名し、それだけを取り除いてもらえるという安心感を持たせます。そうしないと、皿の上のもの全部を残してしまうことになります。次に、食べる環境をつくることです。テーブルクロスを敷き、テーブルの真ん中に花を飾り、楽しい雰囲気にします。 その中で、友だちと楽しい会話をしながら食べることで、嫌いなものも思わず食べてしまったり、次第に食べてみようという気持ちになってくるのです。
  • Q15 自分で量を注文するということであれば、バイキング形式はどうですか?
    自分で好きなものを好きな量だけとれるようにと、バイキング形式にしたり、力フェテラス方式にする園が増えてきました。 でも私たちの園では、配膳する係とやりとりをしながら注文するという方式です。一体どこが違うのでしょうか。
  • A 給食で「人間関係を育てる」という保育を行うために子どもに注文させているのです。
    バイキング形式やカフェテラス方式というのは、コンビニエンスストアで好きなものをかごの中に取っていくのと同じことで、人と関わらず勝手に取ることになります。 集団の中での自由を知るための、人との関わりがなく、保育者の食についての保育という援助が入らないのです。 まず、自分のロで声を出して主張することが重要です。それだけでも、どの子も必ず一日に一度は自分の意志を人に伝える機会を持ちます。 そして、それを受けた保育者が、その意志がいつもと違う場合にはもう一度声かけをします。いつもより少なく注文した場合は、「今日は食欲がないの?」「具合でも悪いの?」 いつもより多く注文した場合は、「いっぱい遊んだからおなかがすいたの?」「あまり、朝ごはんを食べなかったの?」などの会話で、子どもの生活や体調を知ることになります。 また、好き嫌いの注文で、その子の噌好を知ることになり、次の食指導の参考にもなります。配膳には、こんな重要な意味があります。 したがって、配膳に、調理の人にも出てもらうことも必要ですし、たまには保健職からも参加することも意味があるでしょう。
  • Q16 「いただきます」はみんな一緒で「ごちそうさま」は個々というのはなぜ?
    子どもの個人のペースに合わせて生活させるために、食事も支度のできた子から始めるという園があります。 でも私たちの園ではみんなの支度が整うまで待ちます。そして、早く食べ終わった子から好きな活動をします。それはなぜでしょうか。
  • A 食べるまでの時間は子どもにとって待たされている時間ではなく情報交換の場なのです。
    支度のできた子から食べ始めると、子どもにとっては早い者勝ちということになって、その前の活動を途中で中断してしまいがちですし、集団による保育力(好き嫌いをなくすとか)や、みんなで食べる楽しさを感じにくくなってしまいます。 しかし、早く支度のできた子にとっては、「いただきます」をするまでの間、待たされることになります。 そのような思いをさせないために、待つ時間を子ども同士の情報交換の場として保障してあげます。 それまでの活動でどんなことをしたのか(選択性などで活動が個々によって違うことがあるので)、何がおもしろかったのか、など子ども同士の会話を楽しめるようにします。 そして、だいたい揃ったら、みんなで「いただきます」をして食べ始めます。 途中から保育者も自分が食べるために(子どもを監視するためではなく)子どもの中の空いている席に座ります。 みんなで食べながら弾む会話はとても楽しいものです。そして、食べ終わった子から「ごちそうさま」をします。
  • Q17 1クラスの担任をはっきり決めないで子どもをきちんと把握できるのですか?
    私たちの園では、「私たちは世界中の子どもたちの担任です」という考え方を開園のときにモットーとしました。 他のクラスの子どもにも分け隔てなく接するようにしています。そこで出てくるのがこんな質問です。
  • A 子どもは様々な人と出会い、関わって学んでいくことが大切なのです。
    1クラスの担任として、数十人の子どもを受け持つと、クラスの子どもたちを自分の所有物のように囲ってしまうことがよく見られます。 しかし、子どもは多くの人の中で育ちます。様々な人との出会い、関わりの中で様々なものを学んでいくのです。 今、少子化で兄弟体験が少なくなり、核家族化で祖父母と触れあう体験が少なくなり、地域社会連帯の希薄化により地域の中で出会う人が少なくなり、 専門店が減りスーパーが多くなったことで店の人との会話も少なくなっています。そんな中で、子どもが様々な大人との出会いを体験できるのは、幼稚園や保育園などの施設なのです。 そうは言っても、ただみんなで保育するわけではなく、子どもの心の拠り所として、担任は決めます。 子どもはその担任から見守られているという安心感の中で、他の保育者と接するのです。 子どもの活動の記録も担任が主に書きますが、他の保育者も気がついたことを言える雰囲気が必要です。 例えば、コーナーなどに、いつでも、誰でも、子どものことで気がついたこと(何に熱中しているかなど)を書き込めるようなメモやノートを置いておいて、 保育者同士が常に情報交換できるようにしておくとよいでしょう。
  • Q18 保育者のチームワークはどのようにとるのですか?
    そこで、大切になってくるのが、保育者同士のチームワークです。 ただ一緒に多くの子どもをみるというだけでは、きちんとチームワークがとれているとは言えませんね。
  • A 計画を立てるときから複数の保育者で。
    今、小学校でもTT(チームティーチング)という、複数による担任制が提案されています。複数の担任をつけることによって、多角的に子どもをみていこうとするものです。 しかし、なかなか1クラスに必ず複数担任というわけにはいきません。そこで、活動の内容に合わせてクラスを合同にすることによって、複数の担任にすることができます。 それにより、その活動は多面的に行なわれることになります。 そのためには、計画を立てるときから、複数の保育者でします。年案、月案はもちろんですが、週案を立てるときも直接の担任でなくても一緒に参加します。 どの活動は、どのような形態(年齢別保育、習熟度別保育、選択性保育、順序性選択保育など)がいいのか、自分はそのときどんな役目をするのか、他のクラスとの関わりはどうするのかなどは、1人では、また1クラスだけでは計画できません。当然その計画には、普段から他のクラスであっても、子どもをみていること、子どもを把握していること、発達過程を理解していること、お互いの保育者の個性、得意なことを知っていること、職員同士の信頼関係を持つことなどが必要です。
  • Q19 保育の仕方などを変えるとき保護者への説明はどのようにするのですか?
    今までやっていたことを変えるときは、必ず反対や心配の声があがるものです。 それが自分の子どもに関わることであれば、なおさらのこと。さて、どのように対処したらいいでしょうか。
  • A 小学校への移行計画も配慮してきちんと説明を。
    保護者にとって子どもに関しての心配事の第一は、年長になると、小学校に行ってきちんとやれるかどうか?ということです。 勉強についていけるか、友だちができるか。新しい取り組みを始めるときには、まずそのことを心配します。それを、勉強などどうでもいいことではないか、 それよりももっとのびのびとさせた方がいいのではないかと、保護者の心配を取り合わないことがありますが、それは無責任であり、信頼を失いかねません。 きちんと、今、子どもにはどんな力が必要とされているのか、そのために自分たちの園ではどのような保育で、その力を子どもたちにつけさせようとしているのかを説明する必要があります。 そして、きちんと小学校への移行計画も説明しましょう。 次に心配するのは、変化に対する心配です。 今までのものを変えることへの不安です。新しいことに取り組むときには、まず職員がその心配をします。 しかし、そんな気持ちを職員が持っている限り、保護者も心配をします。保護者に説明する前に、まず十分に職員で話し合いを持ち、新しい取り組みに対して、その意味や効果、そのための具体的な方法などを確認することが必要です。
  • Q20 小学校への移行はどのようにするのですか?
    さて、最後になりましたが、保護者が一番心配するのがこの問題。いくら園でのびのび楽しめても、小学校ではうまくいかない、じゃあ困りますね。
  • A 移行措置とは、子どもの負担を少なくしてあげること。
    園の中では、子どもにとって新学期といわれる4月は単に便宜上の約東事であり、成長はその時期だけでなく連続的なものです。 例えば、4月から新しいクラスになったからといって生活が変わることより、初めて立ったことによって生活の活動範囲が広がることの方が、その子にとってはより重要なことです。 したがって、4月の新学期は、気持ちの上で成長する喜びを感じるという意味が強く、実際の生活は、突然一つ上の年齢のことができるというものではありません。 したがって4月前から、新しい部屋での生活を少しずつ体験させ、4月になったら子どもの様子を見ながら新しい生活に慣れていってもらいます。 それに対して、新しい、全く違う場所で、全く違う生活になる小学校入学は、子どもにとっては精神的にもかなりの負担がかかります。 園での小学校への移行措置は、それをなるべく少なくしてあげることなのです。 先に足し算を教えることでも、しつけを厳しくすることでもありません。小学生に保育体験で来てもらったり、小学校に見学に行ったり、職員同士も普段から様々な場面で交流したりすることが、子どもの不安を少なくすることになります。
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